運動が苦手な子、頑張っているのに成長が見えにくい子。
実は、「褒め方」を変えるだけで、運動能力やモチベーションがぐんと伸びる可能性があります。
心理学・スポーツ科学の研究では、コーチや保護者の声かけが子どものやる気・持続力・上達スピードに大きな影響を与えることが示されています(Hattie & Timperley, 2007)。

1. なぜ“褒め方”が大事なのか

- 漠然とした褒め言葉「すごいね」より、
「その動き、前より良くなったね!」 のように具体的に改善点や努力を認める褒め方の方が、子どもは自分の成長に気づきやすくなります。 - 研究では、プロセスや“できたこと”への肯定的フィードバック(competence‑supportive feedback)は、子どもの「自分はできる・成長できる」という感覚を高め、運動へのモチベーションや継続意欲につながることが確認されています(Mageau & Vallerand, 2003)。
- 日本の現場でも、コーチや保護者が「子どもが自分で考え挑戦できる環境」を作ることが、主体性や自信を育てる上で重要と報告されています(日本スポーツコーチング学会, 2023)。
2. 脳科学が示す理想的な声かけスタイル
✅ 具体性を意識する
- 「よく走れたね」ではなく、
「フォームが前より安定してたね」「踏み込みが力強くなってたね」 と具体的に褒める。
✅ プロセス・努力を認める
- 結果ではなく、
「その練習を諦めず頑張ったね」「苦手なことに挑戦したね」 と、過程自体を評価する。
✅ 自律性を尊重する声かけ
- 「こうやって」ではなく、
「君はどう思う?」「このやり方で挑戦してみようか」 と、子どもの意思や考えを尊重する。
✅ 成長感覚を言語化する
- 「前よりこうなった」「前は苦手だったけど、今は少しできるようになった」など、小さな変化を声に出すことで、子ども自身が“できる実感”を得やすくなる。

3. コーチ・保護者向けの具体例
コーチ向け
- 「今日のその動き、前より力強くなったね!」
- 「その挑戦、よく決断したね。成長につながると思うよ」
- 「いつもと違うけど、そのやり方もいいね。よく考えたね」
保護者向け
- 「この前よりボールを取るのがスムーズになってるね」
- 「最後まで走り切った集中力、すごくよかったよ」
- 「苦手なことに挑戦していたね。あきらめずやったね」
ポイント: 結果より“努力・変化・挑戦”を認めること。
それだけで子どもの自信と意欲、自律性が育ちます。
4. なぜ成果が出やすいのか ― 理論的背景
- Self‑Determination Theory(SDT)
子どもが「自分らしく選び、努力を認められる」ことで、心理的基本欲求(自律性・有能感・所属感)が満たされ、運動への内発的モチベーションが高まる(Deci & Ryan, 2000)。 - Competence-Supportive Feedback
適切なフィードバックは「自分はできる」「成長している」という有能感を高め、継続的な取り組み・挑戦・パフォーマンス改善につながる(Kluger & DeNisi, 1996)。 - 日本の実践研究でも、指示・評価だけでなく子どもの意見を尊重する関わりを持つことで、主体性や自己効力感が育つと報告されています(日本スポーツコーチング学会, 2023)。
5. まとめ
運動が得意かどうかは、才能だけでは決まりません。
声かけや支え方次第で、子どもの成長の伸びしろは大きく変わります。
- 具体的に、成長や変化を認める
- 努力・プロセスを評価する
- 子どもの意思・選択を尊重する
この声かけで、子どもは「自分の力で上達できる」と自信を持ち、運動に対するモチベーションも自然と高まります。
まずは今日から一つ、プロセスを褒める一言を意識してみましょう。

参考文献
- Hattie, J., & Timperley, H. (2007). The Power of Feedback. Review of Educational Research, 77(1), 81–112.
- Mageau, G. A., & Vallerand, R. J. (2003). The Coach–Athlete Relationship: A Motivational Model. Journal of Sports Sciences, 21(11), 883–904.
- Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
- Kluger, A. N., & DeNisi, A. (1996). The Effects of Feedback Interventions on Performance. Psychological Bulletin, 119(2), 254–284.
- 日本スポーツコーチング学会. (2023). 育成年代におけるコーチングの実践と課題. Japan Journal of Coaching Studies, 38(1), 15–28.

